2010年に省力化のトライアルとして一部のホテルへ自動精算機を別のメーカーより導入しました。お客さまが精算機で支払いを行っていただくのでホテル側としてはチェックインに要する時間が短縮され業務効率は上がりました。 しかし、フロントカウンターで宿泊台帳に記帳いただいた後、自動精算機コーナーまで移動していただくことは、「お客さまにとって面倒な手続き」と結論付け、展開は見送ることとなりました。 その後、複数のホテルブランドを持つ弊社では2018年に各ブランドの特徴を改めて洗い出し、コンセプトを再構築しました。ホテルメッツでは「上質が息づく」というコンセプトの下、「不足なものも余分なものもないからこそ心と体がリセットされる」と定義し、チェックインにかかる時間を余分なものと捉えました。 チェックインをワンストップで行えることでお客さまにかかる余分な時間をなくす一方で、フロントスタッフは空いた時間を使って、お客さまにコンタクトし、ロビーでお迎えするウェルカムモデルにより、弊社が掲げるブランドコンセプトを体現していこうと考えました。
しかし、フロントスタッフにはチェックイン対応以外にも多種多様な作業があり、それらをどのように削減するかが問題でした。 例えば、お客さまが記帳した宿泊台帳の情報をPMS(予約管理システム)に登録されている内容と齟齬がないかをチェックする作業や、請求金額に誤りがないか、金種が正しく登録されているかなど、これらの仕事は全てスタッフの手作業に依存していたため就業時間を大半このような作業に費やしていました。 スタッフは常に作業と時間に追われていたため、このような状態では自然に笑顔を浮かべることやお客さまにホスピタリティを提供することは、現実的には難しいと考えました。 だからこそ、私たちは、具体的かつ明確に、スタッフから接客以外の作業や事務の仕事を省いて、余裕を創出する必要がありました。それなしには、スタッフの自然な笑顔と本当のホスピタリティを引き出すことはできないと考えたのです。 チェックイン機は、宿泊台帳という紙をなくし、直接電子的に入力し精算まで行えるため、入力内容のチェックが不要です。また、増加傾向にある外国人観光客のパスポートのコピーは、宿泊者名の検索時にお客さま自身がパスポートをスキャンする仕組みになっており、スタッフがコピーを取る必要がありません。 その結果、作業時間が大幅に削減されます。そこで生み出された時間を有効活用してスタッフはお客さまに笑顔とホスピタリティを提供していけるのではないだろうかと考えました。
もともと弊社にとって必要と考えていた機能は様々なチェックインのパターンを洗い出してリスト化していました。その中でも、特に重視したのは「お客さまを離脱させない」というコンセプトを具現化できるかどうかでした。 せっかくやりかけたチェックインを途中でやめなければならないシーンを可能な限りなくしたいと考えました。そのため、メインとなるフローから枝分かれしていく細かな箇所まで機能的にカバーされているかどうかが選定における最大のポイントでした。 また、チェックイン機はPMSとの連帯が不可欠ですが、前述したように、細部のフローに至るまで、PMSと連携するツールや実績を持ち合わせているかどうかが先行基準の一つのポイントでした。 比較的検討段階で、私たちは複数のホテル様を見学させて頂きましたが、自分たちが必要としている機能がすでに見学先のホテルで動いており、その機能が多くのお客さまに利用されていることが確認できたため、NCRを採用するに至りました。 意気込みだけで「できますよ」と言っているわけではなく、NCRの場合は実績があることを背景にして『できる』と言っていたことから、安心感と感じることができました。 さらに、未開発の機能であってもPMSメーカーとの良好なリレーションを築いていることを目の当てりにしていたので、「NCRならやりきってくれるだろう」という期待感もありました。
導入過程においてはユーザーインターフェース(画面の品質)に徹底的にこだわりました。 「お客さまを離脱させない」ためには、異なるITリテラシーを持つお客さまがいらっしゃるわけですが、いずれのお客さまであっても画面を見た瞬間に次ぎに何をしたらいいのかを連想して頂く必要があり、そのためにはお客さまに直感的にわかる画面構成とフローになっていなければなりません。 これを実現するためには細かなことも妥協せず対応をしていく必要があります。フォントの種類やサイズ、輪郭や明度差、文字色と背色、文字の長さやリズムなど、ありとあらゆるパーツにメスを入れました。 人は自分の目や耳に入るちょっとした違和感により、今行っている行為に対し興味と熱意を喪失します。だからこそ、画面を見たときに感じるであろう違和感を一つでも多く、取り除いておく必要があります。一つ一つの細かな修正がお客さまの快適な操作性につながり、ひいてはお客さまを離脱させないことにつながるものと信じてやってきました。 画面の品質には自信がありますので、ご希望があるのであれば、ぜひ他のホテルさまにも私たちが監修した画面を参考にしていただければ嬉しいですね。
おかげさまで「チェックインがスムースだった」「フロントスタッフが親切だった」とのお声も戴いており、評価は上々と考えています。 スムースなチェックインを実現するために、当ホテルでは「クイックチェックイン」と称して、SUICAやPASMOなど全国の交通系カードをチェックイン機にかざすことで予約検索を可能にしています。 名前や予約番号を入力して予約検索をするわけではなく、カードをかざすだけなので、アッという間に本人確認と予約検索がされる仕組みになっています。 また、国内交通系カードを持たない外国人の方向けには、パスポートをかざすことにより、予約検索がかかる仕組みになっていますので、チェックイン機に不慣れな外国人の方にもスムーズなチェックインを体験していただけるようになっています。もちろん、この時にパスポートは画像をスキャンしていますので、あとでコピーを取ったり、ファイリングをする手間もかからず、省力化されています。 「時間の使い方改革」ではないですが、チェックイン機を導入することで、これまでスタッフがしていた事務と作業が省略できました。また、余裕が生まれたことで、お客さまに対して、フロントカウンター越しのサービスではなく、ロビーに立って近い距離でサービスを提供することができるようになり、その結果、「フロントスタッフが親切だった」というお声を頂戴できるようになっています。
「お客さまを離脱させない」をスローガンにシステムを導入してきました。しかし、すべてのケースをカバーしきることは難しく、稼働後に「あ、こんなケースがあるのか」と気づかされることがいくつかありました。 その際、NCRに対応のお願いをすることになるのですが、技術者の皆さんにはクイックな対応をして頂いています。導入前には、NCRさんから「弊社はサポートが少し弱いんです」という発言もありましたが、稼働するまでに体制を一新して頂いたのか(※)お電話をかけても、SEさんの対応するスピードとレスポンスが早いのでたいへん助かっています。 (※)2019年7月にNCRはサポートスタッフの増員と体制の再編・強化を行っています。 その結果、おかげ様でチェックインされる9割以上のお客さまがチェックイン機で手続きをしていただけるまで改善されています。 現在は新店を中心にチェックイン機を導入していますが、今後は既存店への展開も検討しているところです。そうなると、プロジェクト規模が大きくなるため、NCRさんにはあらゆる面で、さらに手厚いサポートをしていただけたらな、と期待しています。
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